半夏生(はんげしょう)の意味と京都の涼景

【この記事のポイント】

・ 七十二候「半夏生」の意味と由来
・ 半夏半作という田植えのタイミングに関する農家の知恵
・ ハンゲショウ(半化粧)の涼やかな白化粧
・ カラスビシャクとハンゲショウの違い
・ 建仁寺両足院の半夏生特別拝観で味わう「目から涼」
・ 食文化と自然への感謝を再確認するきっかけに

目次

半夏生とは?

七十二候が「半夏生(はんげしょうず)」を迎えるころになりました。半夏生とは、むかしは夏至から数えて十一日目を指し、今では太陽が黄経100度を通る日、おおむね7月2日~7月7日頃のことをいいます。

今年は早々と梅雨明けし、すでに蒸し暑い夏真っ盛りですけれども、この時期は、梅雨の終わりに近づきながらも、蒸し暑さに夏の気配が重なってくる頃でした。

「半夏」というのは、サトイモ科の烏柄杓(からすびしゃく)の別名でして、畑の隅や山道にようけ生えます。

ひょろりと伸びる姿から「狐のろうそく」や「蛇の枕」と呼ばれたりもして、不思議な風情です。ほんまに、昔の人の植物へのまなざしは繊細で感心しますね。

田植えの節目―半夏半作

「半夏半作」という農家のことわざがあるそうです。

半夏生までに田植えを終えんと、稲の成長に差し支えるという教えで、半夏生を過ぎると秋の収穫量が減ってしまうという意味です。

こうした言い伝えからもわかるように、半夏生は田植えの節目を示す大切な季節の言葉なのですね。

昨今の「令和の米騒動」にも見られるように、私たちの食文化は自然と深く結びついています。稲を育てる営みの尊さを、あらためて胸に刻みたい季節やと思います。

半化粧の花

ところで、この半夏生の頃に咲く白く美しい花を、ご覧になったことはありませんか。

ドクダミ科の多年草で「ハンゲショウ」と呼ばれ、水辺に群生し、青々とした葉が花のころになると白く変わる様子が、たいへん涼しげで目を引きます。

葉の半分だけ白く装うように見えることから「半化粧」とも呼ばれ、まさに夏の白化粧。

サトイモ科のカラスビシャクとはまったく別物です。

ただ、その咲く時期が重なることや、白く化粧した葉の印象から「半夏生」と結びついたとも言われています。日本人の季節感が息づく、美しい名付けやなぁとしみじみ思います。

目から涼—両足院の半夏生

この季節、京都・建仁寺の塔頭・両足院では「半夏生の庭園特別拝観」が催されます。

池のほとりに白く染まる半夏生の葉が、夏の光を受けて静かに揺れる景色は、まるで涼のしつらえ。

池に映る白い葉の影がゆらぎ、心まで澄み渡るようで、「目から涼」とはこのことやと感じます。

拝観は6月1日から7月14日までの午後に行われており、夏の暑さを忘れてゆっくりと庭を味わうにはぴったりです。

自然のリズムとお米を育てる人の営みが響き合う半夏生。

あらためて、作物を育て、いただくことの尊さに思いを寄せながら、涼やかなひとときをお過ごしになってはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

文化財修復業を営む家に生まれ、一般企業を経て、自らも文化財修復の世界へ。15年間、数多くの修復に携わる。

2006年から、文化財の魅力をもっと身近に伝えたいという思いで、文化講座をスタート。これまでの受講生は、のべ9,500人を超える。

2016年、文化財が及ぼす心身の健康効果に着目し、それを「文化浴」と名付け、一般社団法人文化浴の森を設立。

2017年「健康は足から、心に文化浴を!」で、第5回京都女性起業家賞・京都府知事最優秀賞受賞。

2024年10月、日本文化を世界に伝える「文化財ストーリーテラー養成講座」をスタート。

人生後半に新たなキャリアと誇りを育む人が、文化財を語る力を身につけ、その価値を共に未来へ伝えていけるように。その歩みを支えることに日々尽力している。

著書に『ウォーキング&文化を楽しむ京都健康さんぽ』(いろは出版)がある。

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