清水寺の轟門(とどろきもん)をくぐると、多くの人は弁慶の鉄の錫杖(しゃくじょう)に並びます。けれど私は、そこには向かいません。足を止め、ただ本堂の屋根を見上げます。
檜皮葺(ひわだぶき)の曲線――照り起り(てりむくり)。その線が青空に浮かぶ瞬間、思わず「うつくしい…」と声がこぼれます。千年の時の流れに心が乗って、その優美なカーブに、ゆっくりと撫でられていくよう。
この屋根には、無形世界遺産にも認定された「工匠の技」が生きています。
日本の建築において屋根は、建物の格そのものです。しかも、照りと起りを兼ね備えた檜皮葺(ひわだぶき)は、最高の品格と、人を包み込む温かさを兼ね備えています。高貴な人にも庶民にも愛され続けたからこそ、この巨大な檜皮葺の屋根は、今日まで守り継がれてきました。
本堂の素晴らしさは、舞台の上ではなく下にあり、屋根にあります。
屋根は両脇から見上げるのがポイントです。なぜこれほど優美なのか。最高の美を求めた檜皮葺の技。絶対に崩れないことを願った懸造の構造。
そして西門や三重塔に残る彩色文様は、極楽浄土へと心を導く呪文のように、この場所を包み込んでいます。かたち・わざ・こころ――そのすべてが、ここに重なっています。
美しさの視点、その理由を知ったとき、清水寺がまったく違って見えてきます。
夕暮れの日想観、西方へ沈む夕日は心に沁みこむように語りかけます。この世に生きていることのありがたさと、その先への安心を。
清水寺には、何度訪れても、見飽きないほど、国宝らしい様々な美が静かに溢れているのです。その美を一点一点、堪能しながら巡ると、ここがどんな国宝よりも別格であることを感じずにはいられないことでしょう。
国宝めぐり
時を越えて受け継がれてきた京都・滋賀・奈良に受け継がれてきた国宝を、二年をかけて巡る物語。
鑑賞の視点を手がかりに巡ることで、これまで見過ごしていた日本の美が、徐々に立ち現れてきます。
“かたち”に宿る“わざ”と“こころ”を見つめ、そこに凝縮された日本人の美意識や祈り、価値観を共に感じる物語です。

語り手

澤野友映|文化財ストーリーテラー/文化浴の森 代表
文化財修復の家に生まれ、15年間、社寺建造物の美術修復に従事。
文化財の内側から見てきた経験をもとに、「かたち・わざ・こころ」を語り伝えている。
日程開催の物語
開催日:2026年1月31日(土)【終了】
時間:09:30〜12:00
集合:京阪清水五条駅 改札口前
解散:清水道界隈
参加費:3,500円
実費:500円
※本講座は文化財ストーリーテラー養成コースの一環として実施していますが、ご関心のある方はどなたでもご参加いただけます。初めての方でも安心してご参加ください。
※イヤホンガイド付きで実施しますので、聞こえづらいことはございません。
※回数券をご利用の場合は、1回あたり3,000円となります(回数券18,000円【6回分】1年間有効)
随時開催の物語
この物語は、ご希望の日程でリクエスト開催できます。静かに味わいたい方、京都の文化財を深く味わいたい方、研修やご旅行などで、グループでのご案内をご希望される方のための物語です。

