文化財とスマホで感性をひらく「京都・癒しのスマフォト文化浴」ルポ

10月19日、京都・安楽寺にて「文化財で感性をひらく」をテーマにしたフィールドワークを開催しました。

当日は定員いっぱいの11名の参加者とともに、貸切りで安楽寺の自然と文化に触れ、写真撮影を通して「感じる」「語る」「気づく」体験。そして、日本文化の根底にある世界観を体感しました。

【この記事のポイント】
10月19日、京都・安楽寺にて開催された「スマフォト文化浴」をレポート。
テーマは「観光でも写真教室でもない、感性をひらく一日」。
・住職による安楽寺ものがたり、ストーリーテラーによる奉納額や床の間の修復秘話
・撮影体験から感性をひらき、侘び寂びあそびで日本文化を再発見!
参加者からは「感性を研く訓練になった」「見方ひとつで生命が宿る」などの声

目次

当日のテーマと目的

観光でも写真教室でもない。
静かな環境の中、日本文化に触れながら、
自分自身の豊かな感性にめぐり逢う一日。

当日の歩み

第1幕 安楽寺ものがたり

はじまりは、住職・澤野・田中による語りの時間。
住職からは、安楽・住蓮、そして松虫姫・鈴虫姫の「安楽寺ものがたり」をお話しいただきました。
本堂に響く穏やかな声は、まるで時を越えるようで、鎌倉時代の情景が浮かび上がってくるようでした。

その後は、阿弥陀三尊仏をはじめとする諸仏を拝観。
みほとけの手の位置やかたち、姿の意味を澤野が解説しながら、仏の造形に込められた心を味わいました。

続いて、ストーリーテラー・田中ゆみさんによる一枚の奉納額の物語。
長く蔵に眠っていた文化財が修復をきっかけに語り出す──そんな瞬間を、参加者全員で共有しました。

最後に、書院にて私の父が手掛けた床の間の修復秘話を紹介。
実は桂離宮と同じ技法が用いられており、あえて古びた壁を残すために、現代の技法が使われているという、侘び寂びの感性と修復技法を伝えました。

第2幕 スマフォト文化浴と語らい

「スマフォト文化浴」は、“心が動いた瞬間を切り取ろう”がテーマ。
プチフォトレッスンの後、文化財や自然に触れながら、それぞれが黙々とシャッターを切る時間が流れました。
撮影を楽しみながら語らい、ひと息つき、それぞれのペースで心を解きほぐしていく――そんな穏やかな時間でした。

昼食は、蓋を開けた瞬間に「わぁ~」と声が上がるほど豪華なお弁当。
安楽寺さん御用達の味に舌鼓を打ちながら、笑顔と会話が弾みました。

昼食後は、午前中に撮った写真を一枚ずつシェア。

撮影の想いやエピソードを語り合いながら、同じ場所でも見えていた世界が人によって異なることに気づく、感性の交流の時間となりました。

第3幕 文化を感じる目をひらく

午後は、澤野が建築の視点から日本文化の特徴、そして日本人の根底にある“侘び寂び”や“アニミズムの感性”を解説。

その後、再び撮影した写真をもとに、レンズの向こうの世界と語り合う侘び寂び遊びをしました。

グループごとに言葉を交わしながら、感じたことを共有。
心の動きや解釈を共有し合って、互いの感性に触れる豊かな時間となりました。

第4幕 締めくくりのひととき

最後は、住職が点ててくださった抹茶と阿舎利餅(写真撮り忘れたー)をいただきながら、穏やかな語らいの時間。
朝から共に過ごしてきたこともあり、会場はやわらかな笑顔に包まれました。
そして最後は、みんなで集合写真をパチリ!
想像以上に盛り上がり、笑顔あふれるフィナーレとなりました。

参加者の学びや感想

「素晴らしい未知との体験でした」

「いろいろな撮り方、特にポートレートの使い方がわかって、わざとぼかす方法を学べた」

「今までは何気なく写真を撮っていましたが、これからは色々考えて撮りたいと思いました」

「一人一感(造語!)一人ひとり異なる感性、感じ方があってよいなと」

「感性を研く訓練になった」

「いろんな視点から今置かれている一人一人の環境や一人一人の自分へのメッセージが感じられました」

「自分との向き合い(ができました)」

「本堂の團十郎さんのエピソード、1つ1つのものに深い物語があるのが興味深かったです」

「住職のわかりやすい講話がよかった」

「皆さんの写真と言葉、すべてに感激しました」

「ぼくらはみんな生きている。見方ひとつで生命が宿る」

「日本文化の2面性がおもしろいと思いました」

「また是非参加したい!」

「心のぜいたくな時間(ひととき)に感謝!!」

「目から鱗と、素敵な文化浴でした!」

「今まで体験したことがないことばかりでとても楽しかったです。貴重な経験ができました!」

「改めて日本の文化について、また日本について、考える機会となりました」

今後の展望と次回案内

今後も、文化財や写真を通して、感性と知性の両面から人生を新たにひらく時間を重ねていきたいと思います。

文化財は、ただ美しいから残しているのではなく、人々の感性と知性が織りなしてきた“生き方と美意識の結晶”です。

その世界に心を向け、感じたことを写真に映し、言葉にすることで、私たちは自分の中の“根っこ”に再び出会うことができます。

これからも「スマフォト文化浴」を通して、日常の一つひとつに小さな感動を見いだし、日本文化の奥に流れる精神性を、皆さまとともに味わっていきたいと思います。

次回の開催予定

11月29日(金)「京都スマフォト文化浴―紅葉にひらく(仮)」
詳細は後日ご案内いたします!

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この記事を書いた人

文化財修復業を営む家に生まれ、一般企業を経て、自らも文化財修復の世界へ。15年間、数多くの修復に携わる。

2006年から、文化財の魅力をもっと身近に伝えたいという思いで、文化講座をスタート。これまでの受講生は、のべ9,500人を超える。

2016年、文化財が及ぼす心身の健康効果に着目し、それを「文化浴」と名付け、一般社団法人文化浴の森を設立。

2017年「健康は足から、心に文化浴を!」で、第5回京都女性起業家賞・京都府知事最優秀賞受賞。

2024年10月、日本文化を世界に伝える「文化財ストーリーテラー養成講座」をスタート。

人生後半に新たなキャリアと誇りを育む人が、文化財を語る力を身につけ、その価値を共に未来へ伝えていけるように。その歩みを支えることに日々尽力している。

著書に『ウォーキング&文化を楽しむ京都健康さんぽ』(いろは出版)がある。

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