ここは宇治川のほとり。
西の空から鳳凰が、翼を広げて舞い降りてきました。それはまるで、巨大な翼をもつ造形物。その内部には阿弥陀如来を中心に、西方極楽浄土の雲中供養菩薩たちが飛びまわっています。
それは千年前の人々が、極楽という、まだ誰も見たことのない世界を、この世に現そうとした姿です。
それが、平等院鳳凰堂。
平安の後期。世は末法の時代に入ったと信じられ、往時の人々は不安を抱いていました。極楽へ行ければ救われる。そう信じながらも、まだ誰も行ったことも見たこともない世界。
手がかりは浄土曼荼羅図。工匠たちは、それを手掛かりに、極楽を平等院鳳凰堂として現したのです。
そして千年を経て、今なお細部に息づく技が私たちに語り掛けています。
そして千年を経て、今なお細部に息づく技が私たちに語り掛けています。
千年の歴史を感じさせる大面取といわれる柱のかたち。
後の時代には見られなくなった緻密繊細な透かし彫りの木口の錺金具。
昭和の記憶がある人には、少し意外に思われるかもしれない、あの落ち着いた朱の色。
それは平成の修復の際、瓦から見つかった千年前の塗膜痕から蘇った丹土(につち)の色です。
千年隠れていた色のカケラが、そっと現れたゆえの、全体のお色直しでした。
さらに対岸に現れるのが、宇治上神社です。
まずは森林浴をしながら、拝殿のすがる破風を見上げます。清々しい空気の中で、その優美な曲線を鑑賞していると、心身が静かに整っていきます。
また、本殿には、本蟇股のはじまりを思わせる装飾や、六葉金具の原点となる古式の意匠も残されており、後の時代に展開していく日本の建築装飾の源流を、この目で確かめることができるのです。
華やかさはなくとも、それが、この社殿の本質です。知る人ぞ知る、建築装飾の聖地。
鳳凰が降り立つ極楽の建築と、日本らしい建築装飾の原点が息づく祈りの社。千年前の人々が思い描いた世界は、今も、宇治の空と森の中に受け継がれています。
物語と共にその場に立てば、建築は、ただ見るものではなく、こころの中に静かに息づくのです。
国宝めぐり
時を越えて受け継がれてきた京都・滋賀・奈良に受け継がれてきた国宝を、二年をかけて巡る物語。
鑑賞の視点を手がかりに巡ることで、これまで見過ごしていた日本の美が、徐々に立ち現れてきます。
“かたち”に宿る“わざ”と“こころ”を見つめ、そこに凝縮された日本人の美意識や祈り、価値観を共に感じる物語です。

語り手

澤野友映|文化財ストーリーテラー/文化浴の森 代表
文化財修復の家に生まれ、15年間、社寺建造物の美術修復に従事。
文化財の内側から見てきた経験をもとに、「かたち・わざ・こころ」を語り伝えている。
日程開催の物語
この物語は、午前・午後を通して味わう一日の物語としてお届けしております。午前は平等院。午後は萬福寺。極楽をこの世に現そうとした平安の祈りと、禅の精神が息づく黄檗の世界を、一日かけて歩きます。
開催日:2026年2月28日(土)【終了】
時間:09:30〜16:00
集合:京阪宇治駅 改札口前
解散:京阪黄檗駅(JR黄檗駅)
参加費:7,000円(回数券2回分)
実費:1,000円(庭園・鳳翔館・鳳凰堂内部)
※本講座は文化財ストーリーテラー養成コースの一環として実施していますが、ご関心のある方はどなたでもご参加いただけます。初めての方でも安心してご参加ください。
※イヤホンガイド付きで実施しますので、聞こえづらいことはございません。
※回数券をご利用の場合は、1回あたり3,000円となります(回数券18,000円【6回分】1年間有効)
随時開催の物語
この物語は、ご希望の日程でリクエスト開催できます。平等院のみの物語、あるいは萬福寺のみの物語としてご案内することも可能です。静かに味わいたい方、京都の文化財を深く味わいたい方、研修やご旅行などで、グループでのご案内をご希望される方のための物語です。

