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平成31年1月12日(土)第95号

 

* 思わず行ってみたくなる♪文化浴情報

京の冬の旅がはじまりました!

只今、2019年9月に日本で初開催となる国際博物館会議京都大会に先駆け「京都にみる日本の絵画~近世から現代~」をテーマに、通常非公開の絵画の文化財が特別公開されています。

https://www.kyokanko.or.jp/huyu2018/

キャンペーン期間は3月24日まで。

そんなわけで、本日は私の絵画鑑賞法をお届けします!

 

■6W1Hで楽しむ絵画鑑賞

私は絵画鑑賞を6W1Hで楽しむ。

6W1Hとは、「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」の5W 1Hに「だれに(Whom)」を加えた情報伝達ポイントのこと。

5W1Hは、もとは新聞記事を書く際の原則だったが、今ではビジネス全般に必要なテクニックとしてよく知られている。

絵画も6W1Hに沿って情報を整理すると、時代の空気感、発注者の思い、その思いに応えようとする絵師の心、置かれていた状況などがリアルに感じられるから面白い。

中でも室町時代から400年、徹底的にマニュアルを完備させ、日本絵画史上最大組織の画派として君臨してきた狩野派の絵を、5W 1Hの眼差しで相対的に鑑賞すると、不易流行が見える。

つまり狩野派絵師は、いつの時代もマニュアルに忠実でありながら、時代に応じ、画風や画題に変化をかけてきたのだ。その変化の掛け方にこそ、時代のあり様や当時の関係者の心が見え隠れする。

 

■妙心寺天球院方丈の障壁画

例えば、只今特別公開されている妙心寺天球院方丈の障壁画。

いつ(When)1631~1635年。どこで(Where)京都妙心寺。だれが(Who)岡山藩主池田光政の依頼で、京狩野の祖である狩野山楽と山雪が。

だれに(Whom)光政の大伯母にあたる姫路藩主池田輝政の妹・天球院に。なにを(What)「籬(まがき)に草花図」「竹に虎図」などを。

なぜ(Why)光政が恩義ある天球院の菩提を手厚く弔うために。どのように(How)山楽・山雪が、それまでにない斬新な画題、リズム感のある幾何学的な構造で描いた。

 

■天球院障壁画の背景

1631年というと徳川政権が次々と新しい法律を発布し、江戸幕府を着々と整えていた頃。狩野派の血筋を引く宗家は江戸へ移り、スポンサーである徳川幕府の安泰を祈る絵を描きまくった。

そんな時代に、狩野派でありながら京に残って偉大な師・狩野永徳の作風を守り通したのが、山楽とその娘婿山雪である。山楽はもともと浅井家の家臣であり、浅井家滅亡後は豊臣秀吉の小姓になった。あまりにも絵が上手いので、秀吉が永徳に入門させたという。

それがゆえに豊臣家への恩義篤く、大坂夏の陣の豊臣家滅亡まで大坂に留まり、終戦後は徳川方に命を狙われるが石清水の松花堂昭乗によって救われ、その後は亡き永徳に忠誠し、京狩野を築き上げた。

東西冷戦時代を経て、東に軍配があがったそんな時代に、心が西にあることを表現するのは命取りになり兼ねない。でも偽りやおもねりの心で描く絵は、人の心を感動させられない。

 

■部屋に広がる曲線リズムと水平リズム

天球院は男勝りな姫君だったという。そんな彼女も人生において、東に対する嫌な思いがあった。彼女の離婚理由にも深く関係する。

私が天球院障壁画の中で一番好きなのは山雪が描いた「籬(まがき)に草花図」。 https://global.canon/ja/tsuzuri/works/26.html

それは菊や撫子、朝顔やテッセンといった誰もが育てやすい身近で素朴な草花を、明るく豪快に、そして完璧に描き上げているから。

これは想像の域を出ないが、この草花を見ていると、天球院という女性をモデルにしたように思う。決して弱々しくない。たくましい。そして少し可愛らしく美しさもある。

右から左へと流れるように描かれた色鮮やかな朝顔が曲線リズムで、画面いっぱい水平&垂直リズムに横たわる垣根に絡む。何と!上の方の朝顔は、鴨居に絡むかのように描かれている。

それゆえに襖の枠を越えて部屋全体にリズムの波動が広がる。音まで聴こえてきそうだ。見事としか言いようがない。こんな機知に富んだ斬新な画風は後にも先にも狩野派にはない。

発注者と受注者の心が一つになった時、いい仕事が生まれると思う。山楽と山雪は、きっと天球院の心を深く理解したに違いない。彼らもまた、無理なく制作エネルギーを発揮することができた仕事だったと感じる傑作だ。

天球院竣工と同時期に山楽は77歳でこの世を去り、残された山雪は、約20年後、何らかの濡れ衣を着せられて投獄され、1651年ひっそりと息を引き取った。

 

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